いつもは真っ赤に染まるスタンドもこの日ばかりは違った。
真新しい純白なユニフォームを着た応援部員と泥だらけの選手たち。
プロと比べプレーは稚拙さが見られるが躍動感が半端ない。失策をした選手に対しても周囲が「ドンマイ」「切り替えよう」そんな会話が手に取るようにわかる。
結果はわずか2点差で甲子園の切符を広陵高校が手に入れた。敗れた広島商業高校応援団からむせび泣く声が響く。現実は残酷だ。世の中,うまくいく方が圧倒的に少ない。しかし選手たちの溌剌としたプレーに激しく心が揺さぶられる。大人になるとミスをすることを恐れ,それなりに取り繕い,うまくこなしたような素振りをし,それに満足する。
高校生の純真な姿を見て自分を奮い立たせる。そんな彼らに幸あれ!と思った瞬間,見ると幸せになると言われる黄色い新幹線が静かに通った。
宮下勝則